フジソク・冨士測定器(株) VGM−6 修理記録
2020/5/8到着    完成 
A. 修理前の状況
  • 先だって富士測定器(株)のVGM-6という真空管測定器を購入。
    これは プレート電圧もコントロールグリッド電圧もスクリーングリッド電圧も任意 に設定できるという高性能なものです。
    本体以外に回路図、部品表、出荷時の試験成績表、取扱説明書がございます。
    しかし実際に測定してみると、それぞれの電圧の設定は正しくできるのですが 肝心のGm測定が非常に不安定です。
    不安定というのは、メーターの針が大きく揺れたり、とんでもないGm値を 示したり、同じ球でも何回も連続して測定しているとどんどん値が変化して いく、という状況です。 ここに修理に出しましたが、変化ありませんでした。

B. 原因
  • 真空管ピン選択ホイール不良。
    ピン選択ホイールは回転接点がリベット・カシメ構造なので、修理費は高い(修理費は5万円)。
    前パネルからビス止めされているが、後ろの配線は短く、外さないと抜けない。
    取り外す配慮が無なので、前パネル外し、電源トランス付き後ろパネル取る等、解体が必要。
  • この時代は高Gm真空管が少なく、日本製測定器の多くは十分に対処していない。
    このVGM-6の説明書にも、下記の記述あり。
    5.注意事項
    5−1...各種真空管のうち(特にHigh-Gm管において)往々にして超短波あるいは極超短波の発振を行らうものがあるかもしれません。このような場合にはソケットの部分において、P−K間、SG-K間あるいはG-K間に5μμF−250μμF程度の小容量をバイパスして発振をとめて測定して下さい。
  • この様な基本構成部品の不良は、頭を柔らかくして、思考を巡らせないと解りにくい。
    直ぐに、Gm回路の故障と短絡的に考えるのが常であるが、基本から順番に見ていくのが、早道です。


B. 点検・調整・清掃状況

H. ヒーター電圧の安定度(レギュレーション)測定

E. 12AU7測定

F. ピン選択ホイールバラック修理後 6DJ8、12AT7、12BH7測定

C. 修理状況

D. 使用部品
  • フエライトビーズ                           個。
    ホイール固定ビスナット                       個。
    電解コンデンサー                          個。



E. 調整・測定

G. 修理費    95,000円、上記修理状況で。

Y. ユーザー宅の設置状況


S. フジソク・冨士測定器(株) VGM−6 の仕様(カタログ・マニアルより)

A. 修理前の状況。 画像をクリックすると、大きく(横幅2050ドット)表示されます。
A1. 点検中 前右から見る
A2. 点検中 前から見る。何故か銘板が逆さま! 昭和44年(1969)1月製造。 51年前の製品。
A21. 点検中 メーター裏見る。 昭和43年(1968)10月10日製造。 52年前の製品。
A3. 点検中 右から見る。 左はアダプター収納。 右は外部測定・入力端子と電源コード収納。
A4. 点検中 後左から見る
A5. 点検中 上から見る。
A6. 点検中 上蓋を取り、上から見る。
A7. 点検中 下前左から見る。
A8. 点検中 下後右から見る。
A9. 点検中 下から見る
A11. 点検中 ケースから出し、後から見る。
A12. 点検中 ケースから出し、後から見る。Gm測定用発振器と測定部。電解コンデンサ−が交換されている。
          ここで修理したのでしょう? 製造番号が同じです。
A13. 点検中 ケースから出し、後から見る。メーター部。
A14. 点検中 ケースから出し、上から見る。
A15. 点検中 ケースから出し、下から見る。
A16. 点検中 ケースから出し、右から見る。
A17. 点検中 ケースから出し、左から見る。
B. 点検・調整・清掃状況。 画像をクリックすると、大きく(横幅2050ドット)表示されます。
B11. ヒータ電圧5V、実測=5.12V。
B12. ヒータ電圧6.3V、実測=6.37V。
B21. コントロールグリッド(BiasVolt)−50V、実測=−50.5V(−100Vレンジ)。
B22. コントロールグリッド(BiasVolt)−15V、実測=14.91V(−30Vレンジ)。
B23. コントロールグリッド電圧(BiasVolt)−5V、実測=5.047V(−10Vレンジ)。
B24. コントロールグリッド(BiasVolt)−1.5V、実測=1.517V(−3Vレンジ)。
B25. コントロールグリッド(BiasVolt)+5V、実測=5.107V(+10Vレンジ)。
B31. スクリーングリッド300V、実測=288.9V(EP=300Vレンジ)。
B32. スクリーングリッド150V、実測=148.1V(EP=150Vレンジ)。
B41. プレート300V、実測=300.8V(EP=300Vレンジ)
B42. プレート200V、実測=200.5V(EP=300Vレンジ)
B43. プレート150V、実測=148.5V(EP=150Vレンジ)
B51. GmRange30m_mho SignalVolt=AC5mV、実測=AC5.09mV
B52. GmRange10m_mho SignalVolt=AC15mV、実測=AC14.98mV
B53. GmRange3m_mho SignalVolt=AC50mV、実測=AC49.1mV
B54. GmRange1m_mho SignalVolt=AC150mV、実測=AC147.4mV
B57. SignalVolt周波数測定=10kHz、実測=9.777kHz
H. ヒーター電圧の安定度(レギュレーション)測定
H1. 整流管83。 ヒーター電圧=5V、ヒーター電流=3A。
     本体電圧計=5V供給。 MT7ピンソケット位置電圧計(テスター)=4.788Vで−10%以内。
H2. 電力増幅管KT88。 ヒーター電圧=6.3V、ヒーター電流=1.6A。
     本体電圧計=6.3V供給。 MT7ピンソケット位置電圧計(テスター)=5.90Vで−10%以内。
E.  12AU7測定。 画像をクリックすると、大きく(横幅2050ドット)表示されます。
E0.12AU7(ECC82)相互コンダクタンス=2200μmho「Ep=250V、Ip=10.5mA、Eg1=−8.5V」。
1960/1962/1964/1966ナショナル真空管ハンドブック、1995オーディオ用真空管マニアル、60/62/69東芝電子管ハンドブック、1962日立電子管ハンドブック、1965/1971全日本真空管マニュアル、RC15/19/26/27/28/29/30 Receiving Tube Manual、1966/実用真空管ハンドブック、1995世界の真空管カタログより。
E1. 「12AU7」 ユニット1。 Gm測定=1800μmho。
                     測定条件、「Ep=250V、Eg1=−2V」。 RangeSW=4000μmho
E2. 真空管ピン選択ホイール2番のGの所をドライバーで叩くと、接触不良でフルスケール。
  • ピン選択ホイール1番=P、プレート
    ピン選択ホイール2番=G、コントロールグリッド
    ピン選択ホイール3番=K,カソード
    ピン選択ホイール4番=−F、ヒーター
    ピン選択ホイール2番=+F、ヒーター
E3. 真空管ピン選択ホイールのP(3番ホイール)の所をドライバーで叩くと、接触不良でダウン。ドライバーの位置はずれてます。
  • ピン選択ホイール1番=P、プレート
    ピン選択ホイール2番=G、コントロールグリッド
    ピン選択ホイール3番=K,カソード
    ピン選択ホイール4番=−F、ヒーター
    ピン選択ホイール2番=+F、ヒーター
E4. 真空管ピン選択ホイール。 銘板固定のテープも全て破断しています。
E5. 真空管ピン選択ホイール、横から見る、特殊な構造。カシメのアルミピン2本が見える。
E6. 真空管ピン選択ホイール反対側、横から見る、特殊な構造。カシメのアルミピンが見える。
E7. 真空管ピン選択ホイール横から見る、反対側。特殊な構造。カシメのアルミピンが見える。
E8. 真空管ピン選択ホイール表。
  • 接触不良が起こりやすいG(コントロールグリッド電極)選択し、1ピン−2ピン間の抵抗測定。
    P(プレート電極)、K(カソード電極)やSG(スクリーングリッド電極)は電流が流れるので、接触不良は起きにくいがG(コントロールグリッド電極)は接触不良が起こりやすい。
    又、IP(プレート電流)やSGI(スクリーングリッド電流)表示も実効値なので、表示変化しにくいがG(コントロールグリッド電極)は増幅されるのでGm表示変化が大きい。
E8. 真空管ピン選択ホイール表。
  • 真空管ピン(電極)選択は単純な構造。
    TV-7*/UTV-2*/Uの様な誤選択防止構造は無い。
    全て、同じ真空管ピン(電極)を選択出来る=ショウトする事が出来る。
    下記は1〜6までGを選択した。
    1,2番は酷使されるので、最適位置が他よりずれている。
    特に2番はGT管でヒーター用なので、酷使。
    さらに、OFF、−F、+F、K、G、SU、SG、Pの順に選択するので、通電時は移動不可。
F. ピン選択ホイールをバラック修理後6DJ8、12AT7、12BH7測定。 画像をクリックすると、大きく(横幅2050ドット)表示されます。
F0. 修理中 ユーザーが修理依頼するので、「ピン選択ホイール1番+ピン選択ホイール2番」2個を取り出した。 他7個 は解体しないと不可。
銘板固定のテープも全て破断しています。
  • 但し、これを取り出すには、半田吸取器定温半田コテが必要です。
    狭い場所で高容量の小型半田コテが必要、半田吸い取り線や大きい半田コテでは出来ません。
    作業の主役は道具です、優秀な道具でないと良い仕事は出来ません。         
F1. 6DJ8」ユニット1測定。 Gm測定=9500μmho。
                   測定条件、Ep=90V、Eg1=−1.3V、レンジ=30000μmhoでの測定。
    真空管規格表の相互コンダクタンス=12250μmho「Ep=90V、Ip=15mA、Eg1=−1.3V」
1960/1962ナショナル真空管ハンドブック、全日本真空管マニュアル、オーディオ用真空管マニアル、69'東芝電子管ハンドブック、RC-30 Receiving Tube Manualより。
  • ピン選択ホイール1番=P、プレート..........修理済
    ピン選択ホイール2番=G、コントロールグリッド...修理済
    ピン選択ホイール3番=K,カソード
    ピン選択ホイール4番=−F、ヒーター
    ピン選択ホイール2番=+F、ヒーター
F2. 6DJ8」ユニット1測定中。 真空管ピン選択ホイールのG(2番ホイール)の所をドライバーで叩いても表示は不動。
  • ピン選択ホイール1番=P、プレート..........修理済
    ピン選択ホイール2番=G、コントロールグリッド...修理済
    ピン選択ホイール3番=K,カソード
    ピン選択ホイール4番=−F、ヒーター
    ピン選択ホイール2番=+F、ヒーター
F2. 12AT7ユニット1測定中、Gm測定=5350μmho。
真空管ハンドブック(規格表)の相互コンダクタンス=6000μmho「Ep=250V、Eg1=−12V、Ip=10mA」
1960/1962/1964/1966ナショナル真空管ハンドブック、1995オーディオ用真空管マニアル、60/62/69東芝電子管ハンドブック、1962日立電子管ハンドブック、1965/1971全日本真空管マニュアル、RC15/19/26/27/28/29/30 Receiving Tube Manual、1966/実用真空管ハンドブック、1995世界の真空管カタログより。
  • ピン選択ホイール1番=P、プレート..........修理済
    ピン選択ホイール2番=G、コントロールグリッド...修理済
    ピン選択ホイール3番=K,カソード
    ピン選択ホイール4番=−F、ヒーター
    ピン選択ホイール2番=+F、ヒーター
F2. 12BH7ユニット1測定中、Gm測定=2040μmho。
    真空管ハンドブック(規格表)の、12BH7相互コンダクタンス=3100μmho「Ep=250V、Ip=11.5mA、Eg1=−10.5V」
1960/1962/1964/1966ナショナル真空管ハンドブック、1995オーディオ用真空管マニアル、60/62/69東芝電子管ハンドブック、1962日立電子管ハンドブック、1965/1971全日本真空管マニュアル、RC15/19/26/27/28/29/30 Receiving Tube Manual、1966実用真空管ハンドブック、1995世界の真空管カタログより。
 真空管ピン選択ホイールのG(1番ホイール)の所をドライバーで叩いても表示は不動。
  • ピン選択ホイール1番=P、プレート..........修理済
    ピン選択ホイール2番=G、コントロールグリッド...修理済
    ピン選択ホイール3番=K,カソード
    ピン選択ホイール4番=−F、ヒーター
    ピン選択ホイール2番=+F、ヒーター
C. 修理状況。 画像をクリックすると、大きく(横幅2050ドット)表示されます。
C11. 修理前 
CB. 全真空管ソケット足にビーズ挿入。
CG. Gグリッドバイアス電源リップル改善及び安定化対策。
CP. プレート電圧リップル改善対策。
CM. Gm測定回路電源リップル改善、安定化対策。
E. 測定・調整。 画像をクリックすると、大きく(横幅2050ドット)表示されます。
E1. 
Y. ユーザー宅の設置状況
Y1. 設置状況、 正面から見る。
S. フジソク・冨士測定器(株) VGM−6 の仕様(カタログ・マニアルより) 
型式 VGM−6
フィラメント電圧 1.2---50V
フィラメント電流 1.2〜6.3V=3A、12.6V〜25V=0.6A、35V〜50V=0.3A
プレート電圧 300Vまで可変
プレート電流 150mA 15mA 3mA
スクリーン電圧 300Vまで可変
スクリーン電流 15mA 3mA
グリッド電圧 -100V〜+10V
VR管抵抗値
DRIVE 0-50
測定範囲 0.26〜1m
1〜3m
3〜10m
10〜30m
電源 AC90V〜110V、50Hz/60Hz
消費電力 W
外形寸法(脚含む) 幅×高さ×奥行mm
重量 35kg
価格
                     vgm-6_1f
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